技術情報

令和元年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会 高精度画像変位システムを用いたバイブロハンマ打込み時における挙動計測事例

正会員 樫本 裕輔
株式会社オーク
正会員 川西 敦士
前田建設工業株式会社
正会員 坂藤 勇太
前田建設工業株式会社
  1. はじめに

    仮桟橋施工におけるH形鋼杭の支持層管理は重要である.モーター出力と打ち込み速度の現場測定値から算出される動的支持力値1)は,計測データ数が少なく十分に検証されたものではないこと,また載荷試験による支持力算定は,現場測定に時間を要して全数試験管理することができないことなど,現在,H形鋼杭の支持層管理手法として確立されたものはない.そこで,短時間で精度良く測定できる手法の一つとして、高精度画像変位計測システム(ノビテック製:VENUS3D)を用いて,バイブロハンマ打込み時におけるバイブロハンマ本体とH形鋼杭の挙動を計測した.

  2. 計測概要

    本実験で使用した高精度画像変位計測システムは,最大250Hzの高いサンプリングレートを保ちながら,高性能カメラの視認範囲内で,複数点に設置したマーカーを,0.1mmの精度で3次元同時計測ができる技術である.

    計測は,試験地盤(試験A)と実際に稼働中の現場(試験B)の2箇所で実施した.

    【試験A】H形鋼杭(350×350×12×19,L=10.0m)を電動式バイブロハンマ(トーメック製:FM2-80,出力=60kW,周波数=18.3Hz,空転時振幅値=9.5mm)で試験地盤に打込んだ際の,バイブロハンマとH形鋼杭の挙動を,打ち込み開始時~支持層到着まで計測した.計測マーカーは,バイブロハンマチャック部と,H形鋼杭の上端から2.0m端部に取付けて,4台のカメラで計測した(写真-1).支持層は,GL-4.0m~GL-12.0mの玉石混じり砂礫層(N値50以上を含む)である.

    写真-1 計測マーカー取付け状況(試験A)

    【試験B】H形鋼杭(400×400×13×21,L=12.0m)を油圧式バイブロハンマ(DIESEKO製:PVE2308,周波数=38.3Hz,最大振幅=23mm)でプレボーリング孔に打込んだ際のバイブロハンマの挙動を,支持層付近(風化花崗岩,D~CM級程度)で計測した.計測マーカーは,バイブロハンマの油圧モーター側面部とサプレッサー(遮断部)側面部に取付けて2台のカメラで計測した(写真-2).稼働中の現場でカメラの設置位置などが制限されたため,施工基面より天端が低くなるH形鋼杭の挙動は計測できていない.

    写真-2 計測マーカー取付け状況(試験B)
  3. 結果

    試験Aでのバイブロハンマ打込み時における,支持層前と支持層変化点での,チャック部とH形鋼杭部の挙動測定結果を図-1に示す.すべてのデータで,バイブロハンマの周波数や振幅値が高精度で確認することができた.支持層前では,チャック部およびH形鋼杭ともに,Av=7.0㎜の片振幅幅値を維持しながら深度方向に変位する挙動が確認できた.支持層変化点では,片振幅値が徐々に小さくなり,チャック部では,支持層からのリバウンドの影響で波形を乱しながら,片振幅値はAv=1.0mmに,H形鋼杭では,波形の乱れは確認されずに,片振幅値はAv=0.5mmに収束した.図-2に移動平均速度の経時変化を示す.支持層に至るまでと,支持層に到達してからで,移動平均速度に明瞭な差が確認された.本結果と支持力値との相関関係を考察するにはデータ不足であるが,本技術が新しい支持力管理手法の開発に寄与できる可能性は示されたと考える.

    図-1 打込み時におけるバイブロハンマチャック部とH 形鋼杭の挙動(試験A)
    図-2 移動平均速度(2sec)の経時変化(試験A)

    次に,試験Bの結果を図-3に示す.支持層前では,油圧モーター側面部でAv=3.0mm,サプレッサー側面部でAv=0.4mmの片振幅値を維持しながら,深度方向に変化する挙動が確認できた.サプレッサー側面部での波形に乱れがないことから,振動が吸収されている挙動を高精度で確認できることが分かった.支持層変化点でのサプレッサー側面部の片振幅値は,最終的にAv=0.3㎜に収束した.機材の設置環境の影響で,油圧モーター側面部の挙動は確認できなかったが,サプレッサー側面部においても高精度で波形が得られたことから,油圧モーター側面部でも,試験Aと同様に支持層で収束された波形が得られるものと推測する.

    図-3 打込み時におけるバイブロハンマモーター側面部およびサプレッサー側面部の挙動(試験B)
  4. まとめ

    高精度画像変位計測システムでバイブロハンマ打込み時に発生する細かい挙動が確認できることが分かった.今後は,他の支持層管理システムなどと比較実験を行い,新しい支持層管理手法の開発を進めていきたい.

    参考文献
    1. バイブロハンマ設計施工便覧,バイブロハンマ工法技術研究会,2015.10